『近代日本のハンセン病問題と地域社会』

 ちょっと前に買ってたんだけど、なかなか読めず。
 ようやく読む。

近代日本のハンセン病問題と地域社会

近代日本のハンセン病問題と地域社会


 目的などは以下の通り。

 本書が主題とする近代日本のハンセン病の歴史においては、疾病・医療・医学に関連する多様な研究対象のなかでも、国家による疾病コントロールの手法、すなわち隔離政策の遂行過程に研究の関心が集中してきた。そこでは、ハンセン病の歴史は隔離政策とその下での「断種」・「虐殺」といった死のイメージと不可分に結びつけられ、ハンセン病療養所はときにアウシュヴィッツ強制収容所にも比肩する存在としてえがかれてきた。そのハンセン病の歴史を、病者の「生存」の歴史としてとらえ直してみることが、本書の課題である。(pp.1-2)

 本書は、(1)ハンセン病史を単に国家の政策過程の歴史あるいはそれによる被害の歴史としてとらえるのではなく、法制度に基づく処遇決定のしくみとその地域的な差異をあらためて問い直し、さらにその差異を生んだ諸条件を分析することによって、病者の「生存」とそれを規定する地域の問題として位置づけること、(2)療養所送致という瞬間的な局面や送致先での療養所内での病者の処遇のみを問題にするのではなく、法の下でも可能であったはずの多様な選択肢としての「療養形態」の可能性に着目し、それを含むハンセン病「医療環境」の下での病者の「生存」と隔離の内実を問うこと、以上の二点を主な検討課題とし、ハンセン病の「病者の社会史」を描き出すことを目的としている。(pp.23-4)

 目的はとても理解できるし俺がやってきた研究と共通することが多い。が、歴史学を専門にしておられる方なので、俺とは方法がちょっと異なる(からこそ読んで勉強になる)。あと、感覚的な表現だけど、病者の(あるいは病者の周辺の)「社会」に対する関心の向き具合も俺とは違うかもなという気も(ここもだからこそ読んで勉強になるんだが)。

 
 章構成は以下の通り。

序章  近代日本のハンセン病史をめぐって
第一章 ハンセン病者の処遇に関する法制度の再検討
第二章 「根本的癩予防策要項」とハンセン病者の療養形態
第三章 近代日本におけるハンセン病者救療事業の特質
第四章 戦前・戦時期大阪におけるハンセン病者の処遇
第五章 戦前・戦中期日本のハンセン病医学のヒストリオグラフィ
第六章 補論 近代日本のハンセン病の世界史的位置
終章  総括と展望

 全体を通して、これまでのハンセン病史研究を大きく上書きする研究なんじゃないかなと思った。俺自身も誤って理解していた部分がいくつかあることを示してくれた本なので、今後参考にして論文を書きたい。
 あと、(特に先行研究への批判の部分で感じたが)自分の問題意識を非常に的確に表現している箇所が多くて、読んでて悔しくなった。俺も共通する問題意識を持ってると思うんだけど、論文書いても上手く示せてる気にならないことが多いので。
 こういうところも含めて、「勉強しなきゃ」と感じさせられた。いい本だった。