『ソーシャル・インクルージョンの社会福祉』

 2部構成で、どちらかと言うと理論的な側面からソーシャル・インクルージョンを考えるパートと、事例的な側面からソーシャル・インクルージョンを考えるパートと。
 社会学社会福祉学系の研究者たちが中心。

 「ソーシャル・インクルージョン」は「ソーシャル・エクスクルージョン」に対応する(これをどうにかする)施策を指す語。で、「ソーシャル・エクスクルージョン」とは、

 「貧困」「剥奪」「社会的不利」などとは区別される概念とされるが、必ずしも統一した定義があるわけではなく、概ね、雇用、収入、教育、および文化的・社会的な参加の機会の喪失状態および、その過程を意味する。(p.鄯)

と。なので、インクルージョンの方は、たとえば、

 貧困や失業に陥った人々、障害を有する人々、ホームレス状態にある人々を社会的に排除するのではなく、地域社会への参加と参画を促し社会に統合する(p.鄱)

と位置付けられる(これは2002年の社会保障審議会福祉部会の報告にある位置付け)。で、「統合」と言っても、単に「社会秩序の維持を意味するintegrationではなく、社会の中に包み込むこと(inclusion)を指している」(p.鄱)というのがポイントか。
 目次は以下。

第1章  新しい貧困とソーシャル・インクルージョン
第2章  ソーシャル・インクルージョンと地域社会
第3章  健康とソーシャル・インクルージョン
第4章  地域福祉計画とコミュニティ、そしてソーシャル・インクルージョン
第5章  誰がホームレス施策を支持するのか――東京都台東区荒川区の住民意識調査から
第6章  社会から排除される子どもとソーシャル・インクルージョンの構想――子どもの暮らしの社会史的動向をふまえて
第7章  少子社会が学校と地域の「つながり」に及ぼした影響――統合閉鎖に伴う小学校跡地の行方
第8章  個の時代における男性退職者の「つながり」の形成――アソシエーション型地域スポーツクラブを通して地域の生活者へ
第9章  高齢者にとってのこころの「居場所」――「つながり」の諸相からみた高齢者支援のあり方
第10章 知的障害者の地域生活支援によるソーシャル・インクルージョンの過程――ソーシャル・サポート・ネットワーク形成における支援者の役割
第11章 ソーシャル・インクルージョンの内在的ジレンマを克服する支援展開――外国人女性のDV被害とその支援をめぐって


 個人的に興味深かったのは、11章。ものすごく大雑把に言うと、「ソーシャル・インクルージョンを望まず、自発的にエクスクルージョンの状況に留まる人々の存在」(p.238)をめぐるジレンマだとか、ソーシャル・インクルージョンのためにエクスクルージョンされてる当事者自身の意欲や努力が過度に求められるジレンマ(p.239)だとか。そんなこんなで、「ソーシャル・インクルージョンを目的とする試みが、実践的アプローチのレベルにおいてはソーシャル・エクスクルージョンへと転化しかねないジレンマを内包すること」(p.240)が示されてて。最近、ハンセン病者の「社会復帰」について何だかんだ考えてたので、関連する気がして、面白く読めた。